特徴
最善の治療、患者さまに一人ひとりに適した治療を心がけています。 広島インターから近いところに位置しており、広島市内だけでなく、東広島や県北、県外からも患者さまを受け入れます。
ご挨拶
心臓血管外科 / 主任部長
山根 吉貴(やまね よしたか)
2024年11月の新病院移転に伴い、心臓血管外科部門を新たに立ち上げ、主任部長として就任いたしました。私は広島県内の医療機関で経験を積み、2020年には大動脈手術件数で国内トップクラスの川崎幸病院にて複雑心臓手術や大動脈手術の技術を習得しました。さらに、2023年には、低侵襲心臓手術(MICS)で国内トップの実績を持つ順天堂大学順天堂医院でMICSの技術を学びました。
広島ハートセンターでは、これまで培った技術を地元広島の皆さまに還元し、緊急手術にも迅速に対応できる体制を整えています。当院のフットワークの軽さを活かし、365日24時間体制で患者さまを受け入れています。
「心臓手術なら広島ハートセンター」と言っていただけるよう、全力で努めてまいります。今後ともよろしくお願いいたします。
医療チームのご紹介
手術室
手術室は最新の設備(麻酔器、人工心肺装置など)を整えました。広さも大きく設計しており、スタッフが働きやすい環境となっています。低侵襲手術を行うため、4Kカメラを備えております。
治療の対象となる疾患・手技
低侵襲心臓手術(MICS:ミックス)
当院では、胸骨を温存する低侵襲心臓手術(MICS)を心臓弁膜症、不整脈、虚血性心疾患に対して行っています。2023年10月から2024年9月にかけて、当院の心臓血管外科 山根は順天堂大学順天堂医院で約200例のMICS手術に携わり、技術を習得しました
完全内視鏡下MICSについて
僧帽弁形成術、三尖弁形成術、心房中隔欠損閉鎖術、心房細動手術は完全内視鏡下手術が可能です。創部は3-4cmと小さく、手術道具で創部や肋骨を無理やり広げないので、内視鏡補助下で行うMICSよりも術後の痛みも少ないです。当院で採用している4K内視鏡を使用し、心臓の細部まで確認しながら手術を行うことができます。
大動脈弁手術や冠動脈バイパス手術については創部を5〜6cm程度切開して行う、内視鏡補助でのMICSを行います。術前の検査などで、MICSが不適と判断した場合は、正中切開での手術を行うこともあります。
ミックスのメリット・デメリット
メリット | デメリット |
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・除コツを切らないため、感染のリスクが低い ・社会復帰が早い(術後運動制限が必要ない) ・胸に大きな傷が残らない ・術式(特に僧帽弁・三尖弁)によっては、正中手術よりも 視野が良く、精度が高い点もある |
・足の付け根を切開して、人工心肺の間を挿入する 必要があります。 ・トラブルの対応が正中切開と比較して困難 |
MICSの対象となる疾患
完全内視鏡(3-4cm) | 内視鏡補助(6-10cm) |
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・僧帽弁疾患(弁形成術・弁置換術) ・三尖弁疾患 ・心房細動(メイズ手術、左心耳切除・閉鎖) ・心臓腫瘍 ・心房中隔欠損症 ・心房内血栓症 |
・大動脈弁疾患(弁置換術) ・虚血性心疾患 |
心臓弁膜症
当院では、大動脈弁狭窄症や閉鎖不全症、僧帽弁狭窄症、三尖弁閉鎖不全症などの心臓弁膜症に対して、弁置換術や弁形成術を行っています。弁膜症の治療には、MICS(低侵襲心臓手術)も適応しています。
病変である弁尖を切除して、新たな人工弁に取り替える手術です。人工弁は機会弁と生体弁の2種類があります
素材 | おもにカーボン | ウシやブタの組織 |
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血栓 | できやすい | できにくい |
抗凝固薬 | ワーファリンを生涯飲み続ける | ワーファリンを3ヶ月間飲む |
再手術 | 人工弁の血栓や感染 | 人工弁の劣化・感染 |
症例のTAVI | できない | 可能 |
僧帽弁の弁尖を残し、人工弁輪(リング)や人工腱索などを使用することで、僧帽弁の弁尖がきちんと接合し、逆流をなくす治療です。弁形成術の方法については以下の通りです。手術前の検査(エコーやCTなど)で術前プランを決定します。手術前検査でMICSもしくは形成術が適さないと判断する場合もあります。
弁形成術の方法
弁の形の悪い部分を切り取って整える
弁輪が拡大しており、リングにより元の大きさに戻す
人工腱索により弁尖が逸脱する事を防ぐ
大動脈疾患
大動脈解離や大動脈瘤に対して治療を行います。疾患や症例に応じて、人工血管置換術やステントグラフト内挿術(胸部・腹部)を行います。
大動脈解離は突然発症する疾患で、大動脈の内膜に亀裂が入り、血管が裂けてしまう病気です。スタンフォード分類A型の急性大動脈解離の場合は、緊急手術が必要となるケースが多く、人工血管置換術を行います。
Stanford A型 | Stanford B型 |
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特徴 | |
上行大動脈におよぶもの | 下行大動脈より末梢に限定される |
治療方針 | |
・原則緊急手術 *希に保存的加療となる場合 |
保存的加療(入院・安静・血圧管理) ・手術(破裂や臓器灌流異常の場合) |
大動脈瘤とは、大動脈が膨らんだ状態のことを指します。瘤が一定の大きさを超えると、破裂のリスクが高まるため、治療が必要となります。 大動脈瘤の治療法には大きく分けて2つの方法があります。1つは、瘤を切除して人工血管に置き換える「人工血管置換術」、もう1つは、カテーテルを使って大動脈瘤内への血流を遮断し、破裂を予防する「ステントグラフト内挿術」です。
虚血性心疾患
狭心症や陳旧性心筋梗塞に対する冠動脈バイパス術を行っています。
冠動脈バイパス術は、狭心症や心筋梗塞で狭くなったり詰まってしまった冠動脈の先に新しい血管(グラフト)をつなぎ、血流の迂回路を作る手術です。このバイパスにより、血液が病変を越えて心筋にしっかりと届くようになります。
バイパスに使用するグラフトには、長期間にわたり開存率が高い内胸動脈を主に使用します。その他の血管については、患者さまの体の状態や病変の狭窄度に応じて適切なバイパスグラフトを選択します。
また、低侵襲左開胸冠動脈バイパス術(MICS-CABG)とカテーテルでの経皮的冠動脈形成術を組み合わせて行う、ハイブリッド治療も積極的に行なっていきたいと考えております。重症糖尿病、透析、皮膚疾患など、感染リスクの高い患者さまについてはMICSによるバイパス手術がいい適応になると考えられます。
心房細動
心房細動に対して、低侵襲心房細動手術(ウルフ・オオツカ法)を行っています。
心房細動は、動悸や息切れを引き起こす不整脈の一種で、脈の乱れに対してはカテーテルアブレーションが用いられます。しかし、心房細動が持続すると心臓内に血栓が形成され、脳梗塞のリスクが高まります。年間約4%の確率で脳梗塞を引き起こす可能性があり、予防のためには抗凝固薬(サラサラ薬)の服用が必要です。
最近の研究では、非弁膜症性心房細動では、心臓内の血栓の約98%が左心耳に発生することがわかっています。そのため、左心耳を切除または閉鎖することで、心房細動による脳梗塞を防ぐことができます。 抗凝固薬を服用していても脳梗塞を繰り返す方や、薬の副作用で強い出血に悩む方、カテーテルアブレーションで効果が得られない方には、低侵襲心房細動手術(ウルフ・オオツカ法)が有効な治療法です。
全身麻酔下で胸壁に5-10mm程度の穴を4カ所あけて、完全内視鏡下で手術を行います。以下の2種類の術式あります。
①左心耳のみ切除・閉鎖
②左心耳切除+外科的アブレーション
ウルフ・オオツカ法のメリット | ウルフオオツカ法の適応となる方 |
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・完全内視鏡下手術で行うため低侵襲である ・左心耳の形態に関係なく手術が行える点 ・抗凝固薬を離脱できる ・不整脈が原因である脳梗塞の予防効果 |
・抗凝固薬の副作用で出血し、困っている方 ・抗凝固を内服していても、脳梗塞を発症した方 ・高齢や透析などで抗凝固薬を継続して飲むことが困難な方 ・抗凝固薬を中止したい方 |
末梢血管疾患
下肢静脈瘤に対する治療、閉塞性動脈硬化症に対する動脈内膜摘除術やバイパス手術、慢性腎不全に対する内シャント造設術を行っています。
下肢静脈瘤とはふくろはぎや太ももの静脈(青い血管)の弁が壊れることによって起こる病気です。弁が壊れて逆流することで、静脈に血流がたまり、太く浮きでて瘤(こぶ)のようになっている状態です。
下肢静脈瘤の発生 |
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メドトロニック社より
・高齢女性
・慢性的に便秘の方
・妊娠や出産を複数回経験している方
・立ち仕事が長い方
・遺伝など
・大伏在静脈瘤(太ももの内側)
・小伏在静脈瘤(ふくらはぎから膝の後ろ)
・側枝型静脈瘤
・網目状静脈瘤
・くもの巣状静脈瘤
※網目状・くもの巣状静脈瘤は治療の対象となることは少ない。
・足の血管が浮きでてこぶのようになっている
・ふくらはぎのだるさがある
・足がむくむ
・足がつる(こむら返り)
・足の痒み
・足の色素沈着や潰瘍
血管が浮き彫りになっていて、足のだるさ・重さ・むくみなどがある場合は受診されることをお勧めします。
検査は超音波(エコー)を用いて、血管の太さや逆流の有無をチェックします。
下肢静脈瘤は良性疾患であり、急激に悪化したり命に関わることはありません。
種類では大伏在静脈瘤もしくは小伏在静脈瘤が治療適応となります。
基本的には見た目以外の上記症状が出てきた場合に治療適応となります。
①血管内塞栓術(接着剤グルー)
カテーテルを静脈内に挿入し、医療用接着剤(グルー)を注入して血管内腔を閉じる治療です。
静脈麻酔・局所麻酔で行います。
※アレルギーを多く持っている方、喘息薬服用中の方、塞栓症既往のある方などは適応とならない場合があります。
②ストリッピング術
従来からある根治的治療法です。伏在静脈を外科的に引き抜く方法です。足の付け根は膝付近を2cm程度切開し、静脈内にワイヤーを通して、血管を引き抜きます。静脈を抜去するので、再発率が低い方法です。静脈麻酔・局所麻酔で行います。
③スタブ・アバルジョン法
上記の方法と組み合わせて行うことがあります。 治療した血管の周りにある静脈瘤(ぼこぼこした部分)は逆流がなくなることで徐々に消失してきますが、すぐには消えません。瘤が大きい・数が多い場合は数箇所、小さな切開をおいて、瘤を切除することがあります。スタブ・アバルジョン法といいます。傷が多くなりますが、直後から血管のボコボコが目立たなくなるというメリットもあります
閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化によって動脈が狭くなったり詰まることで、手足への血流が十分に供給されなくなる病気です。このため、手先や足先が冷たくなったり、筋肉に痛みが生じます。
閉塞性動脈硬化症の診断には、下肢動脈圧測定や超音波、CT、血管造影を行い、必要に応じて血行再建術を行います。治療法には、血管内治療と外科手術の2つの選択肢があります。
血管内治療:カテーテルを足の付け根や手から挿入し、バルーン拡張やステント留置を行います。
外科的手術:固くなった石灰部分を取り除いたり、バイパス手術を行います。
慢性腎不全に対しては、バスキュラーアクセス手術(自己血管内シャント造設術・人工血管内シャント)を行います。
自己血管内シャント造設術:動脈と静脈をつなぎ、血流を増加させることで血液透析を行えるようにする手術です。通常、利き腕と反対側の腕に作り、局所麻酔で40〜60分程度で手術が行われます。
人工血管内シャント造設術:自己血管を使用できない場合に、人工血管を使ってシャントを作成します。自己血管に比べ、閉塞や感染のリスクが高くなります。手術は局所麻酔で60〜90分程度です。
内シャント造設術の入院予定